過去の日記

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# うたた寝をしていた15分に見た夢



『コイレ 〜漁村の医院〜



「お宅の息子さんについて大切なお話しがあるので、すぐに病院に来ていただけますか。」

電話口で医師はそう言った。

「息子さん」というのは、私の息子ではない。私は彼の友人だった。

私は、彼の母上に頼まれ用事を済ませるために、彼と母上の住まいに来ていたところだった。

そんな留守中の家に、突然の電話が掛かったわけだ。


「私は肉親ではないですが、代わりにすぐに行きます。」



黒電話の受話器を置くと、私は彼の家を出た。








彼の住む町は、小さな寂れた漁村だった。

村はこの時期になると、常に曇天と強風にさらされる。

今や漁師も少なったこの村で、最大の産業は一軒の大きな旅館だった。

木造の平屋ばかりの閑散とした風景の中で、7、8階建ての旅館と、そのすぐ脇にある村を横断する高速道路の高架橋だけが、唯一の現代的な構造物だった。



高速道路を挟んで、旅館の反対側には丘があり、そこにある小道が病院への通路だった。

病院への向かう途中、私はその丘から高速道路と旅館をチラと見下ろした。

旅館と高速道路は、ほとんど寄り添うように建っており、旅館が設置した高速道路の案内用の電光掲示板が、高速道路をまたいでいる。

すると、電光掲示板の上に中年女性が歩いていたのがわかった。

彼女が着ている、くすんだ桃色の和服は、旅館の女中であることを示していた。


この旅館は時折、電光掲示板に旅館のコマーシャル用の宣伝文を表示させている。

その宣伝文を切り替えるたびに、女中は旅館の3,4階あたりから伸びる丸いパイプのような支持材の上を歩いて電光掲示板まで行き、電光掲示板の上部にある機器を操作しなければならないのだ。


女中が歩いている、電光掲示板のすぐ下の高速道路は、数は多くないが高速で車が走っている。

この旅館の女中とは死と隣り合わせの危険な仕事であった。

友人の母上もまた、この旅館で働いていた。

女手ひとつで彼を育て上げるのはさぞかし大変だっただろう。


友人は学生だった。

勉強が忙しく、家にはあまりいない。

母上もまた仕事があるため、親子は滅多に家では会えないであろうことが想像できた。



そうこうしているうちに、病院についた。

ゴツゴツとした岩山の脇には、狭い敷地の中に小さな灯台と、築数十年は経過した木造平屋の小さな病院が建っていた。


病院と呼ぶには、あまりにもお粗末な建物だ。


「失礼します。」


病院に入ると、薄暗い土間に丸ストーブが赤々と燃えていた。

友人は、椅子に座ってぼんやりとしている。

診療机の脇にいた、白髪に髭をはやした、6,70代くらいの小柄で痩せた医師はこう切り出した。


「彼は“コイレ”をしていますな。」

コイレ?

初めて聞いた単語で、まったく意味がわからなかった。


「コイレ・・・ですか・・・。」


「まったくよりにもよってコイレとは。今後どのように治療すべきかしっかりと考えなければなりません。」


「・・・はぁ。」

上の空といった感じの私をみて、医師は切り替えした。


「ところでコイレの意味を、あなたはご存知か?」


まったく経験のない言葉だ。

しかし、たいがいの察しはついた。

このくらい年の者がする、問題行為というのは限られているものだ。



「・・・・つまり、彼が麻薬を常用しているとおっしゃっているのですね」


「いかにも。しかし、ただの麻薬常用ではありません。」


読みは外れではなかった。

つまり、コイレとは麻薬常習の形態のひとつであるらしい。

ひょっとすると、コイレとは「小入れ」を意味しているのかも知れないと気がついた。



「つまり、一回あたりの麻薬使用量が比較的小さく、その分沢山服用しているということでしょうか?」


「・・・そうではありません。」


違った。

私は、思いついたことを、矢継ぎ早に続けて言った。



「麻薬の蒸留をつづけて、必要以上に高濃度に精製しているということでしょうか。」


「そうです。それは非常に危険な行為だ。治療には時間と忍耐がいる。」


何も言わず、うなだれた彼を見ると居たたまれなかった。

そして、彼が真面目に勉強に励んでいると今も思っているであろう、彼の母上のことを考えると、さらに胸が詰まった。

しかし、その母の愛と期待が、彼にとって重荷であり、彼をコイレに駆り立てた原因であることも、容易に想像が出来た。


 
このまま、彼のコイレが発覚すれば、この親子の関係は壊れてしまう。

私は友人として、母上の耳に入らぬうちに彼を更生させなければと思った。

しかし同時に、彼をコイレの誘惑から完全に解き放つことの困難さを感じていた。

そんな責任は持てない。そうも考えた。



「先生、確かに現在の彼のコイレは決して容認できることではありません。」

私はさらに続けた。

「ですが、彼をコイレも仕向けた生活環境も問題です!・・・今、彼からコイレを取り上げたら、ひょっとしたら彼は自殺さえしてしまうかもしれない!」

興奮のあまり、演説口調になってしまう。


そう。すぐにコイレを断つことは無理かもしれない。

しかし、少しづつならば私にだってできるかもしれない。

ほんの少しの希望を込めて、私はそう言っていた。



「なぁ、そうだろう?」

私は彼に同意を求めた。

それまで無言だった友人は、初めて大きく頷いた。


彼が答えてくれたので、私はほんの少しだが安心することができた。




しかし、今思うと、この友人の顔にまったく見覚えがないことを、その時の私はちっとも気にとめていたかった。






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